昨夜あまり眠れませんでした。
ある生徒のことが気になっていたからです。
彼女は、陸上100mを「11秒台」で走る少女です。関東大会では上位入賞し、なおかつ英検・漢検も取得。
今年で最後となる前期選抜試験で合格するには十分な実績がありました。
内申が少し足りないことを除けば…。
部活動が盛んな某高校に不合格になったと知ったとき、自分の見通しの甘さに苦虫をかみました。
彼女は再び塾で勉強を始めました。そして迎えた私立高校の試験(併願)。
プレッシャーからか、試験途中で退席。子どもの数が少ない現在では珍しい、私立併願不合格という結果になってしまったのです。
公立入試前日の今日、彼女は最後の授業がありました。
私は彼女を教えたことがありません。私が直接指導していない生徒は英数学院にはたくさんいますが、名前と顔はほぼ把握しています。資格取得状況や、先に述べた部活動等の実績も。
さすがに性格までは分からないケースは多々ありますが、彼女の場合、お母様から状況を伺って、
このまま入試を迎えたら…と危惧しました。志望校に必要な内申が足りていないことも気がかりでした。彼女は人任せにはできないと考えたのです。
授業は夜からでしたが、学校が終わったらすぐ授業を始めて(個人指導)、早めに帰宅させてあげようと、学院長と相談し、保護者の方にもその旨を伝えました。
さまざまな要素を鑑みて、彼女には、数学の対策が必要と感じ、塾長に直接指導をお願いして頂きました。
現在(当時)の数学のテストは、ポイントをしっかり指導すれば、どんなに苦手でも20点はとれます(50点満点)。国語や英語より短時間で、得点の取り方を教えられます。
そして、もう一つ必要と感じたのは、メンタル対策でした。
彼女に会った講師からは「落ち込んでいる様子はなかった」と聞きましたが、自信をなくしているのは確かです。
そこで、荒療治を考えました。
音楽を聴かせようと。それも、生で…。
思いついたら即行動に移りました。懇意にしている新堀ギター教室の先生に頼み、彼女のために演奏してほしいと頼みました。
実は、私はかつてそちらでギターを習っていたので、彼女の意思を確認しないまま、とりあえずご挨拶に行きました。
ギター教室の先生方も少し心配していました。英数学院と教室は目と鼻の先ですが、試験の前日に知らない場所に来て音楽を聴いても大丈夫だろうか、と。
私が演奏したらどうか? その方がいいのではとさえ、言われました(笑)。
それができないから、頼んでいるのです! 私には、残念ながらギターの才能はなく(手先が不器用)、というか音符アレルギーなのです(笑)。
が、私は一旦、自分の考えに疑問を抱きました。これはただ、私の自己満足なのではないか?、と。
彼女に無理強いはさせないことにしました。「もし、彼女が来たくないと言ったら申し訳ありませんが…」と教室の先生にお伝えし、後は塾長に任せました。私は彼女とあまり面識がないので、根回しだけすることに決めました。
どういう流れでそうなったのかは知りませんが、彼女は勉強が一段落すると、新堀ギターに一緒に行ってくれました。元生徒の私が案内して。
実は、ギター教室の先生方のスケジュールも空いていないと聞いていたのですが、奇跡的に、「生徒がインフルエンザで休みだから」と時間をとって頂きました。
もし、その言葉が狂言だったら、私は涙を流したに違いありません…。
クラシックギターの音色ほど、人の心を打つ音はありません。私はそれを経験し、誰かに聴かせたいと願って習い、今日彼女を連れてきたのです。私自身は挫折しました(笑)。
驚いたのは、彼女が音楽に詳しかったことです! 体育会の女の子だとばかり思っていましたが、過去にピアノを習っていたとのこと。ギターの先生と彼女の間で、音楽の専門用語がどんどん飛び交い、私の視線は宙を泳ぎました…。
「『○○』っていう曲が好きなんですが、ギターで演奏できるんですか?」
そのとき、私は知ったのです。彼女の部活実績なら、私立の強豪校から引く手あまたです。特待生で迎え入れたい高校だってあるはずです。それなのに、彼女は公立にこだわっている。
陸上では好成績を収めながらも、高校では陸上ではない、新しいことに挑戦したいのだと知ったのです。勉強しているのも、新しい道を歩みたいと願っているからなのでは。
自分の浅はかな見方を反省しました。人とは、なんて深く、そして、多面的であるのか。彼女は、もう大人の階段を上り始めているのです。私はまたしても、勉強させてもらったのです。
演奏後、彼女は「いい気分転換になりました」と喜んでくれました。
しかし、それは私の台詞でした。今日までの超過密スケジュール。私はイライラし、これまで心ががさついていたことに気づいたのです。
帰ってきてから、暫し、放心状態になりました。このブログの記事名は、真実ではありません。
生のギターがここまで心に染みるとは。分かってはいましたが…。ギター教室まで足を運んでもらったのは、先生方を煩わせない為でもありますが、そこがクラシックギターの音響に配慮された空間だと知っていたからです。
たとえ、私が拙いギターを塾で演奏しても、ここまで心に響きません。
夜、ギターを貸していた妹に「もう使っていないなら、返してほしい」とメールしました。案の定、お飾りとなっていたようです(笑)。
ああ、また1年が過ぎていく。高校入試を迎えると毎年そんな気持ちになりますが、いかんせん3月から、新年度の授業が始まり、今年からの新しい教科書(脱ゆとり)に備えた準備で、そんな感傷は吹っ飛びます。
今日、なぜ自分がこのような、勉強を教える仕事と逸脱した行為をしたのか。それは、「本能」としか言えません。悔いを残したくない。この塾で学んでくれた以上、幸せにしたい。
一か八かの賭であったことは確かです。全員の生徒に同じことは、とてもではありませんが、できません。
多くの方にご協力を頂きました。この場を借りて、感謝します。
来年は、自分が…と書こうとしましたが、やはり才能がありません(笑)。しかし、この世に音楽があって良かったと思ったのは、真実です。
今日は、ぐっすり眠れるかもしれません。
<2年前の記事の再掲です。昨年から神奈川県公立高校入試に前後期選抜は廃止され、選抜機会は一度になりました>
see you again!(*^-')/~☆Bye-Bye♪「