前回、「課題図書」は第5期から始まり、一応その理由めいた事を書きましたが、




実は、この代は少し特殊だったのです。




中2のかなり早い段階で結成しました。皆、すでに志望校や目標を設定している子が多かったのです。




そこから逆算して、「勉強を教えるだけでは限界がある。彼らの可能性を広げなければ、目標には手が届かない」と考えたからです。




彼らには、少し「金八先生」ぽい話もしたかも知れません(笑)。全員男子だったので




「遊ぶ時間を削って勉強しなさい」ではなく、「誰よりも遊び、誰よりも部活動等を頑張り、そして学びなさい」




というような趣旨のことを話した記憶があります。確か「バランサー」という言葉を使っていました。




読書は、その一環だったのです。




初めは渋々と従ってくれましたが(笑)、次第に「次の課題図書は何ですか?」と嬉々と聞いてくる子も出てきました。





やがて、彼らが進路を本格的に選ぶ時期になると、私は困り果てました。




国立志望者、私立志望者、公立独自入試を受ける生徒と、公立問題を受ける生徒と、バラバラだったのです。




これらは、英語に関して言うと、難度や語彙数から解き方に至るまで、大きな隔たりがあり、





どういう授業をすべきか悩みました。間を取るというのも難しかったですし、それに満足しない生徒も出てくるでしょう。




私は、「力をつけさせる」というシンプルな命題の下、高校受験の最高難度を指導しました。





そのときは、学生時代より勉強したかもしれません(笑)。





ところが、徐々に授業に来なくなる生徒が出てきました(笑)。怖くなったのでしょうか




私は毎回、授業の冒頭に、前回の内容の小テストを行います。解答は一人ずつ当てるので、復習していない生徒は白日の下に晒されます(男子だけなので、遠慮はなしです)。




答えられない生徒には、やんわりと復習しようねと言うのですが、やはり怖いんですかね(笑)。




入試が近づくと、こちらも自然と迫力が出てきます。彼らを志望校に合格させるという至上命題がありました。




「必ず結果を出す」という誓いすらありました。




さて、入試の前日、明らかに様子がおかしい子が出てきました。




彼は、解けない問題が出てくると苛立ち、ぶつくさ呟いていました。




最後まで授業についてきてくれた子でしたが、プレッシャーもあったでしょうし、こちらも合格させたいという気持ちが先走りすぎて、少し手加減が足りなかったのかもしれません。




「試験前日の授業はゆっくり休んでください」と、彼の保護者にお伝えしました。





私は彼に手紙を書きました。結構筆まめなんです(笑)。




「君は1年間、愉しんで本を読んできてくれました。『来月は何ですか?』と聞きに来てくれたこともありましたね。




本は、作者からの『手紙』です。君に宛てた手紙です。君はそれを読み続けてきたのです。




これから君が受ける試験にも作者がいます。テストも実は『手紙』なのです。




これまで楽しんで本を読んできたのと同じ気持ちで、君は『手紙』を読めばいいだけです。




君だったら、愉しんで読むことができるはずだよね」
(趣意)




例え目的のためとはいえ、子どものハートを折ってしまってはいけないのです。




この想いがどうか試験前に伝わって欲しいと、切に願いました。




数日後、元気な声で「合格しました!」と電話をくれたとき、何より元の彼に戻ってくれたことが嬉しかった記憶があります。




彼は理系で有名な高校へ進学しましたが、きっと今も読書を趣味にしてくれているのではないでしょうか。